ほとんどの経営者が事業承継は初体験です。そして二回目をすることありません。企業内で経験を生かすことが難しい事柄であり、本番一回切り。他人の力も使いながら、成功させましょう。

事業承継の現実

文字の通り捉えれば事業承継は『事業』を『承継』するというだけです。一般的な方が想定されているのは社長という役職が親から子供に代わるというように考えられている場合が多いかもしれません。

しかし、現実はそのような状態にはありません。よくあるのが子供には良い教育を与えており、医者や大企業で勤務しているため非常に稼ぎが良く、収益が出ないこの事業を継がせられないというものです。

ただ、取引先や地域のお客様には迷惑を掛けられないので、事業承継をすることで何とか続ける方法がないものかというのが大半であり、社長が70歳以上で続けている理由だったりします。

だから、なかなか事業承継が進んでおらず、日本国においても非常に喫緊の課題となっており、公的な支援も沢山あります。令和元年現在の代表的なものとして『事業承継ネットワーク』『事業引継ぎ支援センター』があります。ぜひ活用できるものは活用していきましょう。

事業承継の三要素

事業承継は大きく分けて『事業』『経営者』『資産』の三つの要素からなっています。

『事業』とは経営理念やこれまで培ってきたノウハウ、取引先からの信頼、一緒に働いてきた従業員さんなど、これまでの経営で培ってきたもの全てです。「納期が早い」、「丁寧な仕事」「価格が妥当」等といった企業の強みも含まれます。これらは会計帳簿には記載されない資産であり、知的資産とも言われます。この部分の承継が最も難しく、最も重要なポイントとなります。

『経営者』とは企業のトップとなる経営者をどうするかということです。子息が承継する場合は比較的スムーズに進みます。最初から事業承継は頭の中にあるため、子息も経営の勉強を自然としている場合も多く、周囲も承継することを想定しているというのは理解も得られやすい環境です。

一方で、子息がいない場合は大きく異なります。非常に能力、胆力に優れた従業員がおり、引き継ぐことを明確に示していれば、問題ない場合もありますが、金融機関からの借り入れがある場合は個人保証がネックとなる場合も多いです。そのため、『経営者』の問題を解決するためにM&Aという選択をされる場合も増えています。

『資産』とは金や土地となどです。資産の承継に関しては資産の方が多い会社であれば、税金に関するものが中心です。相続税などに関しては非常に取りうる手段が多くなっており、現在、依頼している税理士に頼むだけで問題は解決します。

問題となるのは個人所有、法人所有が分かれていない場合です。土地は社長の持ち物で、建物は会社の持ち物などといった場合にはどのような形にするかを決める必要があります。

ただ、事業承継において本気で考える必要があるものは間違いなく『事業』と『経営者』です。

受ける側に立ってみる

現状の事業承継において軽視されているのは受ける側(承継者)のことです。金の卵を産むガチョウを欲しがらない人はおらず、ゴミをもらいたい人もいません。良い話だと言われても、内容がわかっていなければ怪しい話と捉えるのは当たり前のことです。

経営者の仕事というのは多岐にわたっています。営業活動、社員に関すること、金融機関との調整は一般的なものですが、組合や協会といった団体の役員などを引き受けるといったこともあります。四六時中仕事のことを考えているという社長がほとんどです。

起業を支援している中で、社長自身も忙しすぎて、どれだけ多くの仕事をしているかわかっていないということもよくあります。儲かる仕事と儲からない仕事の区別もついていない状態になっている企業も多数見ています。

一方で、引き受ける側からすれば、できるだけ儲かり、負担が少ないことを求めているわけですし、何をしなければならないのかも明確になっている方が望ましいと思っています。(もちろん楽をするだけのことを考えている人を跡継ぎにはできませんが。)人間なので無駄なことをしたくないと思うのは自然です。

仮に今の時点で自分が事業承継を受けるとすれば、社長にはどういう仕事があり、どういうスケジュールなのか、企業の収益状況はどういった状態なのかということが分かった方が良くないでしょうか。自分がやりたくないことは他の人もやりたくありません。まずは経営者としての状況、企業としての状況をわかるようにしておくことから始めてみましょう。

専門家の活用方法

まずは前述の公的機関の支援を活用することから始めてみましょう。ただ、公的な支援には回数制限や深く入り込んだ支援は難しいこともありますし、廃業に関しては発言しにくい部分もあります。

もし、組織や人間関係が複雑であり、人的にも余裕がない場合は当社を始め、多数の民間支援会社もあります。ぜひ、一度問い合わせてみてください。

専門家は第三者であるため、企業の状況を一般的な目線で判断することができます。事業面、財務面、外部環境、後継者の資質まで分析し、どのように進めるのが企業によって最も適切かをご提案できるので、後悔しない決断をできる可能性は高くなります。

事業承継は失敗できない一発勝負。通常の経営においては「やってみなはれ」が成功の秘訣となる場合が多いですが、事業承継においては通用しません。使えるものは何でも使うことが重要です。公的支援、民間サービス等、できる限りのものを活用してよい承継を実現しましょう。